東方大陸《ユードフェンリル》南部、オルジェス地方には魔境と呼ばれる場所がある。
 スフフォイル海の向こうに存在する、魔導王国ラミシス遺跡だ。今では立ち入ることもないこの島は、一年を通して常に濃霧がかかっており、大陸からはその様子をうかがい知ることは出来ない。
 魔物が徘徊するおぞましい大地だとか、硫黄と溶岩によって大地が蝕まれ瘴気が発生する地だとか人々の間では囁かれているが、いずれも噂の域を過ぎないものであり、現時点でこの島がどのようになっているのか、正確に確認した探索者はまだいない。

 東方大陸《ユードフェンリル》には、北部に二つのバイラルの王国がある。両国ともアズニール暦一〇〇〇年代初頭に建国された、まだ若い国家である。
 ひとつは、いにしえよりの都ガレン・デュイルを王都とするアズニール王国。
 もうひとつは、大都市イストゴーアを王都とするメケドルキュア王国である。
 この二国を興した初代国王、アズニールのカストルウェンとメケドルキュアのレオウドゥールは、若い時分より親交が篤く、二人の少年期にはユードフェンリル大陸南部のラミシス遺跡やエヴェルク大陸の世界樹を訪れるなどの冒険行を重ねていたと伝えられている。彼らの冒険について、正式に文書が記されたことはなく、吟遊詩人の数ある唄がその功績を今に伝えているのみである。
 それによるとカストルウェン達は、ラミシスの王都オーヴ・ディンデを取り囲む四つの塔に入り込み、それらに巣くっていた竜《ゾアヴァンゲル》達を退治して財宝を持ち帰った、とあるが正偽は確認できない。また、歌によれば、どうやら残念なことにカストルウェンとレオウドゥールは、結局のところ王都に入り込むことは叶わなかったらしい。

 魔導王国ラミシスがあった島は、正式な名称がない。
 はるか西方のフェル・アルム島よりなお広大なこの島には、かつて“魔導の時代”にラミシスという魔導王国があった。不死という禁忌を追い求めるラミシス王国と漆黒の導師スガルトは、魔導師シング・ディールと朱色の龍ヒュールリットによって滅ぼされ、以来この地は遺跡と化した。

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